婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
「確認なんだが、きみ、俺から逃げようとしてないか」
奈子はすぐに首を振った。
でももちろん、宗一郎は引き下がらない。
「俺を好きになりたいと言ったよな」
取調べ中の捜査官のように追及してくる。
それを言ったのは宗一郎であって、奈子が口にしたわけではないけれど、賢明にも抗議はしなかった。
抵抗すれば今にも手錠をかけられそうだ。
黙秘する奈子の顎の下を、宗一郎の指先がなにかを探すみたいにそっとなぞる。
その指たった一本のせいで、奈子はずるずるとくずおれそうになった。
宗一郎が片頬で笑う。
「なるほど、まだお気に召さないってことらしい」
奈子は否定しようとしたけれど間に合わなかった。
大きな手に顎を掴まれ、顔を上げる。
宗一郎は奈子をじっと見下ろしたままキスをした。
思い知らせるようにゆっくりと唇を塞ぎ、腕の中に閉じ込める。
下唇を引っ張られ、小さなリップ音がして、奈子は慌てて宗一郎の胸にしがみついた。
そうしないと立っていられなかった。
歯を立て、ついばみ、ときどき離れて、宗一郎がキスを深くすると、奈子はぐずぐずと泣き出しそうになる。
強い目眩がして、呼吸の仕方も忘れてしまう。
これまでのいたずらみたいなキスとはなにもかも違った。