婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
宗一郎がふと奈子の顔を覗き込み、訝るように片眉を上げた。
「東堂の会長がポロに熱心だなんてよく知ってたな」
奈子はまともに宗一郎を見上げてしまい、つかのま口がきけなくなった。
ネイビーブルーのタキシードで正装した宗一郎は、レッドカーペットを歩くハリウッドスターみたいに洗練されていて、うっかり目を合わせると思わず見とれてしまう。
なにも考えられなくなると困るので、奈子はなるべく正面から見ないようにしていたのだった。
奈子は頬を染め、ほんの少しためらってから白状した。
「佐竹さんに教えてもらったんです」
奈子にとっては会ったこともない各界の重鎮ばかりが集まる披露宴なので、佐竹に招待客のリストを作ってもらって、趣味や経歴や鬼灯家とのこれまでの付き合いなど、頭がパンクしそうになるまでつめ込んだ。
東堂会長に挨拶をしたら、きっとポロ競技のことが話題になるだろうと予測したのも佐竹だ。
奈子はルールさえ知らなかったから、動画を探して勉強しただけだった。
だけど鬼灯家に嫁いだからには、いつまでもいじけてばかりいられない。
幼い頃から夢に見ていた理想の結婚とは違っていても、宗一郎にとっては、理想の花嫁でありたかった。
宗一郎がいたずらっぽく目をきらめかせる。
「たしかに、佐竹のヤマ勘は当たるな」
奈子の頬に落ちた髪をそっと指で払って笑った。
「だけどあいつ厳しかっただろう。奈子ががんばってくれて助かってるよ、ありがとう」
返事に困った奈子は口を引き結び、ただ黙って首を振った。