婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~





梅の花が咲く頃、宗一郎と奈子は結婚披露宴を執り行った。

空は鮮やかに青く、手を伸ばせば掴めそうなほど近い。
春がすぐそばにいるのを知って、ツグミが高らかに歌っていた。

鬼灯グループが経営するラグジュアリーホテルの八階はバロック様式の宮殿を模してデザインされたフロアで、空中庭園は平面幾何学式、招待客はタキシードやドレスで着飾って、シャンパンとシャンデリアとダイヤモンドが美しさを競うようにきらめいている。
まるで豪勢な舞踏会だ。

実際、結婚式よりはレセプションパーティといったほうが相応しい。

招待されているのは政治家と経営者がほとんどだった。
少し歩けば官僚か研究者に行き当たるものの、親類や友人を見つけだすのは困難に近い。

もちろん、みんながふたりを祝福してくれる。

でも誰にとっても奈子はただ、鬼灯宗一郎の花嫁であり、茅島行高の娘だった。

それに正直、奈子にも披露宴を楽しんでいる余裕はない。
立ち居振る舞いに失礼のないよう気をつけるのが精いっぱいで、もし宗一郎がそばにいないなら、逃げだしてしまいそうなほど緊張していた。

「奈子、ちょっと」

グループ関係者への挨拶をあらかた済ませた頃、宗一郎に腕を引かれ、結婚式のために花や風船で飾られた庭園に出た。
青い空の下、ケータリングを囲んでカジュアルに過ごせる庭園には、比較的年齢の若い招待客が集まっている。
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