堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く
催事部に仲のいい同期がいるので、問い合わせてみると、ちょうどイベント前で大変だったらしい。
手書きのものを全部任せてと言うと、「天使か!!」と喜ばれた。
すぐにやってきた同期の宮下瑠花は、大きな袋を抱えてきた。
案内状に沿える手紙は、見本を見ながら書写の要領で書き写す。試しに百合ちゃんにやってもらったのだが、ものすごくうまい。
瑠花は大喜びで褒めちぎり、百合ちゃんは「書写は何度もしていますので…」と頬を染めた。
封筒に住所と宛名を書く作業も請け負って、これからしばらくの間、百合ちゃんはこの仕事の専任ということにした。
百合ちゃんは静かに仕事を進め、集中すると失敗もほとんどない。
本当に書道が得意なようだ。
表情が明るくなっていく百合ちゃんを見ると、ホッとした。
「彩芽ちゃん、よく思いついたわね」
美鈴さんが、偉い偉いというように頭を撫でてくれる。
タロちゃんのお陰だ。彩芽は嬉しくなって、心の中で感謝した。