真夜中に恋の舞う
「おーい?」
瞬きを繰り返すことしかできず無反応な私に、犀川くんは目の前で手を振る。
きゃー!なんて声にならない声を上げながら、両手で口を押さえるはるちゃんが視界の隅に映る。
「え、だって……そもそも、犀川くんって私のこと知ってるんですか?」
「知ってるよ、水沢萌乃ちゃん。クラスは違うけど同級生でしょ」
知ってるんだ……びっくりだ。こんな有名人な王子様に、他のクラスの平民の私が認知されているだなんて思っていなかった。だって、喋ったこともないのに。
「で、どうするの?」
「え、えっと、」
「ん?」
にこにこした穏やかな笑顔は崩さないくせに、答えを急かすように問いかける犀川くん。
私の思考はまだこの状況を飲み込めていない。追いつけない。どうしたらいいかわからないし、そもそも意味がわからない……。