ままになったら極上御曹司に捕まりました?!
そう言って、控え室に戻ろうと背を向ける。
「あの、」
後ろから専務に呼びかけられて振り向く。
「はい、?」
「今日、この後空いてませんか?」
空いてるって、どういうことかしら?
「ホテルの会場のことでしょうか?」
「いや…君の予定が」
「私の…予定ですか?」
「はい、もし時間があったらどこか飲みに行来ませんか?」
私が?専務と?どうして?
「えっと…2人でどこか行く、ということでしょうか?」
「はい、急に誘ってすみません。ぜひ一緒に行きたくて」
予定…はなにもないけど、どうして私?
「あ、先に名乗らずにお誘いしてしまってすみません。私は宮代コーポレーションの社員なんですけど」
実際には社員じゃなくて専務じゃない。
それに専務って、誰ふり構わず女性を誘ってるのかしら。
社員に手を出すことはないけど、他社の人なら誰でもいいっていう感じなのかもしれない。
もっと真面目で堅実な人かと思ってた。
それに知らない人に手を出すなんて、余程自分の顔に自信が無いと出来ないことよね。
「………あの?この後は予定ありましたか?」
「あ、いえ、この後は何も無いんですけど…」
急に聞かれつい、本当のことを言ってしまった。
「ほんとですか?じゃあ、僕の好きなお店があるのでぜひ」
「…分かりました、私でよければよろしくお願いします」
なんで頷いてしまったのか、自分でもよくわからなかった。
彼の放つオーラに負けたのか、優しい気遣いに堕ちたのか。
何はともあれ、気づいた時には何故か、私は専務と飲みに行くことになっていた。