ままになったら極上御曹司に捕まりました?!
エレベーターまでもが豪華なのね…

だけど狭い密室に、2人きりでいるとなんだか変な感じ…。

自分の隣にいるのが、人としての憧れを抱いていた専務だなんて。

軽やかな鈴の音と同時に扉が開く。

「お先にどうぞ」

「ありがとうございます」

扉を出ると、フローラルな香りで鼻腔を満たされる。

ここが家って信じられない。毎日ホテルにいるような感覚ね。

「すごい豪華ですね…」

ありきたりの感想しか出てこないくらい、素敵なところだった。

「そうか?さくらが気に入ってくれたなら良かった。寒いから早く入ろう」

そういって、扉を開けてくれる専務。

「お邪魔します」

部屋はモノクロの家具で統一されていて、オシャレでスッキリとしていた。

そして、何よりも目を奪われたのが大きな窓から見える絶景だった。

「わぁっ…綺麗……」

周りの家々から漏れる光の粒がとても幻想的で、宝石がちりばめられているみたいだった。

「どう?気に入った?普段誰も入らないから、さくらが部屋にいるのすごい新鮮」

外を見つめていると、耳元で専務の声が聞こえる。

突然専務の吐息が耳にかかり、体がビクッと跳ねる。

「、、本当に綺麗です。こんなに綺麗な景色が毎日見られるなんてすごくいいですね」

「うん、本当に綺麗だよ。頑張って手に入れた甲斐があった」

ガラス張りの窓に映る専務の視線は、何故か外観でなく私に向いていた。

なんて反応すればいいのか分からず、話を変える。

「あの、さっき言ってた話って、」

「あぁ、そうだったね。そこ座って待ってて」

そういって、専務は奥のキッチンに入っていく。

そこって…あのソファのことよね。

お高そうで座るのも気が引けるんだけど…
それに、専務の家ということに、さっきから気持ちが落ち着かない。

とりあえず、下に敷いてある絨毯の上に正座する。

それにしても…まさか私が男の人の部屋にいるなんて。

しかも専務の…。

さっきは普段誰も家に入らないって言ってたけど、噂の婚約者さんとか、他の女の人たちもきっとここで座ったりしているんだろう。

何故かそう思うと、胸がザワっとする。

何考えてるのよさくら。あの容姿で地位もあって、他の女性がいるなんて不自然ではないもの。

でも…婚約者の方には申し訳ない気もするわね。

専務に、婚約者がいるって直接聞いたわけではないけど、大企業の御曹司にいないはずがないだろう。

知らない間に婚約者でない女の人が部屋に入り込んでいるというのは、良くないことだとは分かっている。

でも、自社の専務だし…。断れる状況じゃなかったから、今回だけは許してください、と心の中で婚約者に謝罪する。

でもそんなことはただの言い訳で、愛はないと分かっていても、専務に惹かれる自分がいることは、心のどこかで気づいていた。
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