ままになったら極上御曹司に捕まりました?!
「私、自分で歩けます」

「いや無理だね、腰抜けちゃってるよ」

……あまりの恥ずかしさに言葉も出ない

専務は部屋の奥にある扉を開けて、私をベッドに下ろす。

「綺麗だよ、さくら」

そう言って、私のトップスのボタンを外すしていく専務。

その動作の一つ一つに余裕があって、余計に焦らされる。

専務も着ていたシャツを脱ぎ捨てると、逞しい腹筋があらわになる。

暗い部屋に差し込む月光が、彼の色気をさらに引き立てる。

ギシッというスプリングの音と同時に、キスの嵐が降り注いでくる。焦らすように軽く、だんだん深く。

こんなことをするのは記憶のない夜だけなのに、身体は彼を覚えているのか、奥が疼く。

「んぅ…専務…」

「ちゃんと名前で呼ばないと、気持ちよくしてやれないよ」

彼は淫妖な表情を浮かべてズルいことを言う。

「んっ…亮介さん…はぁ……」

「ごめん、自分で言っときながら結構名前呼びってクルな。今晩は優しく出来そうにない」

その言葉と同時に、彼の熱くて硬いものが身体の中に入ってくる。

「あぁんっ……」

痛みはなく、ひたすら快感の波が私を襲う。

獣のような彼は、ひたすら私の身体を貪り尽くす。

「亮介さんっ…好きです…」


意識が混濁する中、彼の「愛してる」という言葉が降り注いでいたような気がした______。


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


新しい年が明けて皆が心浮かす中、私は暗い気持ちで家に籠っていた。

専務は仕事が忙しく、あの夜以降ほとんど顔を合わせないままだった。

メッセージのやり取りはあるものの、内容は簡素なものだった。

同じ会社で働いているとはいえ、かたや御曹司、私はただの平社員だ。

2度目の夜の後、1度だけ会社で見かけた。
簡単に会える存在ではないと頭では分かってはいても、現実に目の当たりにすると結構辛かった。

前までは気にすらとめなかったのに。

彼に私以外の本命がいようと、少しでも彼の瞳の中に映っていられればいい、そう思っていた。
いや、ただ縋っていただけかもしれない。


その日の夕方、気分を晴らそうと大型ショッピングモールへ行き、たまには自分へのご褒美を買おうと思っていた。

そこは庶民的なお店から、高級なお店まで揃っていて、普段から様々な層の人が利用している。

それに加え新年ということで、福袋やイベントなどもあり、どのお店もかなり賑わっていた。

私は、店頭に並んでいた可愛らしいトップスに一目惚れし、悩んだ末に購入した。

次に専務に会える時は、これを着ていこうと考えていた時だった。

少し前を歩く姿に既視感を覚える。

広めの背広に、スラットしたスタイル。

……専務だ。

久しぶりに会えて嬉しい、

でもその反面、信じたくない自分も居た。

だって、隣には女の人がいたから。
それも、モデルみたいに綺麗な人。

2人で目を合わせて笑い合う姿。何度見てもその横顔は専務だった。

途端に、可愛い服を買って浮かれていた自分が馬鹿らしくなった。

専務にとっての本命の人は別にいるということを忘れていた。

ただ少し、専務の特別になれたと思って私が勝手に浮かれてただけだった。

まだそういう関係になってから時間も経ってないし、そもそも最初から分かりきっていたことなのに。

いてもいられずに、ショッピングモールから出る。

周りには家族連れで手を繋ぎながら歩く親子、幸せそうなカップル。

余計自分が惨めに感じられた。

なんで、このタイミングでこんなところで会っちゃうの。

これ以上、専務との関係が続いても自分が苦しくなるだけだ。

むしろ早いうちに関係を解消した方が、傷も浅くて済む。

もう、専務と会っちゃだめだ。
関係を終わりにしよう。

…まぁ、始まってたとも言い難いんだけど。
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