ままになったら極上御曹司に捕まりました?!
悠真の支度を済ませ、保育園まで送り届ける。
朝食を出し終わった後の旅館はやることがあまりなく、休憩時間になる。
いつもはその間に家事を済ませて置くのだが、今日は違った。
旅館を出る亮真さんをお見送りする際、亮真さんに『今日のお昼頃空いてる?』と聞かれ、
特に何も考えずに『空いています』と答えてしまったのだ。
そこからあっという間にランチすることになってしまった。
身から出た錆とよく言うが、私の場合は口から出た錆とでも言うのだろうか、とにかく顔を合わせたくないと思っていたのに…。
亮真さんはランチの時も忙しいだろうに、わざわざ会おうだなんてことは、悠真が自分の子どもだってことに気づいたのかな。
忙しい中時間を作ってまで私と会うって、まず私のことを覚えていただけでも奇跡みたいなものなのに。
でもきっとあの時の女性と結婚して、幸せにやってるんだろうな。
私にはもう悠真しかいないし、悠真が私の全てだから、もし亮真さんが自分の子どもだって気づいても親権は譲るつもりは無い。
ランチの時間までに、家事を済ませ身支度をする。
どんな服装がいいのか分からず結局ラフな格好にしたけど、正しい選択だったのかは分からない。
だけど、普段は手を抜いてしまう化粧だけは丁寧にやった。昔の姿からはかけ離れてしまったが、それでも一応女としてのプライドは残っていた。
何を言われるんだろうと言う拭いきれない不安感と一緒に、言われたお店へ向かう。
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店に入って周りを見渡すと、亮真さんの姿はすぐに見つかった。
相変わらずのオーラを放っていたので人が沢山いても目立つのだ。
「お待たせしてしまいすみません」
「大丈夫、俺も今来たところだから。わざわざ忙しいのに呼び出してごめんね。来てくれてありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
何に感謝しているのか自分でもよく分かってなかったが、とりあえず席に座って身を落ち着かせる。
2人きりになるのはあの夜以来でどことなく気まずい。昨日は悠真がいたから何とか平気だったのに。
「ご飯何頼む?俺はまだ仕事が残っててお酒飲めないんだけど、さくらが飲みたいものあったら遠慮なく飲んで」
「私もお酒は大丈夫です。私このランチセットにします」
「じゃあ俺もそれにしよっかな」
そう言って店員さんを呼んで頼んでくれる。
亮真さんと話す店員さんは、どことなく顔が赤くなっているように思える。
…まぁかっこいいものはかっこいいのよね。既婚者だけど
それに、さりげなくリードしてくれるのは相変わらずね。
そういうところが私は好きだったんだなぁと今更ながらすごく思う。
ま、今じゃ手の届かないようなところにいる人だけど。