桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「それは、私たち小学生の時の写真だよ」
美菜が教えてくれた通り、幼い頃の3人が写真の中で笑顔を浮かべている。
でも、右端に写っている男の子に見覚えがある。
「この男の子‥‥‥」
確か、あの日。
ーー『蒼ちゃん!』
写真に写っているこの男の子が駆けつけてくれた。
ーー『蒼ちゃんをなんとしてでも助けたかったんだ』
泣き崩れる私を抱きしめてくれた男の子。
「それ、陽向だよ」
「‥‥‥!」
その瞬間、涙が溢れ出した。
「えっ? ちょっと、蒼⁉︎」
私、どうして、気づかなかったんだろう。
こんなにも近くにいたのに。
あの時の男の子が陽向だって‥‥‥。
「蒼、どうしたの⁉︎」
「陽向だったんだ‥‥‥事故直後、私に駆けつけてくれたのは」
「やっと思い出したんだね」
美菜の言葉に不思議に思う。
「美菜は知っていたの?」
「うん。この前、陽向が全部話してくれたから」
だから、美菜はあの時泣いていたんだ。
「今度はさ、蒼が駆けつける番なんじゃないかな?」
そう言って美菜は私からアルバムを受け取る代わりに私のスクールバッグを渡してくれた。
「私のことはいいから、早く陽向の元へ行っておいで」
そっと背中を押してくれる。
「ちゃんと自分の気持ちも伝えるんだよ!」
「うん! 美菜、ありがとう!」
美菜にお礼を伝え、部屋を飛び出した。
全速力で走る。
ーー『蒼ちゃんは、お父さんを失ったショックにより事故直後の記憶をなくしています』
私が忘れていた空白の時間。
小さい頃の陽向の写真を見て、全てを思い出した。