学園怪談
 去年体育館で見た実演を、1年たって自分が出来るのだ。早田君は素直に喜んだ。
「早田! 今日からお前は実演に向けて特別強化特訓に入る!」
「オス! よろしくお願いします!」
 ……しかし、その日から始まった早田君の特訓は想像を絶するものだった。
「いいか、ブロックを割るには毎日休むことなく拳をこのブロックに叩きつけろ! 拳が潰れようが、骨が砕けようが、1日百回だ! 毎日、今日から休むことなく1日百回の打ち込みを続けろ!」
「お、オス!」
 早田君は目の前に出されたブロックを見つめ、好奇心と僅かばかりの動揺を露にした。
 ……この時のブロックは本物の硬いやつだった。自分達のパフォーマンスの時には割れやすいものや、裂け目の入った板なんかを使ってるのに酷い話だよまったく。
 それから早田君の過酷な特訓が始まった。来る日も来る日も硬いブロックを殴り続けた。
 ゴスッ! ゴスッ! ゴスッ!
「39……40……41……くうううううう、痛いい!」
 ブロックはタオルで包まれていて、手を保護してはくれたが、それでも皮が破れ、肉が裂け、血が滲んだ。ブロックを包むタオルが血で真っ赤に染まっても、早田君は続けた。
「どうした早田! そんなことじゃ本番を任せられないぞ!」
 卒業を間近に控えた高沢は最後とばかりに早田君をいびった。
 ……そして高沢の最後の訪問日、道場に入った高沢は血まみれの拳でブロックを叩き割った早田君の姿を発見した。
 でも早田君は新入生の部活紹介には出られなかった。ブロックを砕く特訓で全ての指を骨折してしまっていたのだ。悔しさをバネに、回復した早田君はそれからも空手に精進した。
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