学園怪談
 ……高沢は高校でも空手をしていた。地元のおちこぼれ高校に入り、中学の時となんら変わることのない部活動の毎日を送っていた。本人は高校を卒業したら総合格闘技界にデビューする気でいたのだ。
 そして高沢が3年生になった時、部長となった彼の空手部に一人の生徒が入部してきた。
「先輩……また、よろしくお願いします」
「お、お、お前は」
 すっかり逞しく成長してはいたが、色白で物腰の低さは昔と変わっていなかった。
「そ、早田!」
 早田君は先輩である高沢のもとに再び入部してきた。
「先輩、中学のときはお世話になりました。あれから僕、色々なものを割れるようになりました」
「そ、そそ、そうか。おおお、お前はよく俺の言いつけを、ま、守ったからな」
 高沢はすっかり形が変わり、何よりも強固な武器となった早田君の右拳を見つめた。
「僕、ブロックの次は厚手のガラス、その次は岩、今では鉄でもへこませるようになりました」
「そ、そうか、だ、だだ、だいぶお前も……強くなったな」
 もう高沢のレベルよりも早田君は遥かに上の次元にいた。
「それで僕……次は……」
「次は……?」
 早田君は驚くほど爽やかな笑顔で言った。
「次は……先輩の頭蓋骨を割りたい……」

 ……。
「彼は一体どうやってそんな超人的な力を身につけたんだろうね。俺はね、武道の神様みたいなのが本当にいて、早田君の一途なまでの向上心を汲んだんじゃないかと思ってる。人間は未知の能力をまだまだ引き出せていないらしいしね」
 私は格闘技はやったことはないが、少しばかり格闘技に興味をもった。
 でも、早田君のように純粋な強さを求めるのではなく、高沢さんのような曲がった強さを求める格闘家がどれだけいるのだろうか?
 テレビなどで格闘ブームというニュースを聞く度に、私は不安に刈られるのである。


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