彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
「すまない。記憶にない。何期生だろうか」
「大丈夫です。先輩が私のことを覚えていないだろう事は織り込み済みでした。大学時代、先輩の周りには常にひとで溢れていましたし、私はただの3つ下のゼミの後輩ですし。あの子を妊娠した頃にはもう芸能界との付き合いを絶っていたなんて知りませんでした。調査不足だったんですね」
女はそう言って背筋を伸ばしてソファーに浅く腰掛け直した。
口調と表情を変えすっかり態度を改めた女は俺と早希に深く頭を下げた。
「申し訳ありません。お騒がせいたしました。出来心だったといえば信じてもらえますか」
「出来心でこんな非常識なことをしたというのか」
「ーーー数ヶ月前、勤めていた会社の経営が怪しくなりすぐにシングルマザーの私はリストラ対象になりました。何とか粘ってみたものの結局先月退職。再就職先を探していたところで久保山先輩の、アクロスコーポレーションの副社長の結婚話を耳にして・・・ただの僻みだったんです」
ただの僻みだと。
顔に記憶すらない後輩がただの僻みでただの先輩の婚約者の元に子連れでやってきて「責任を取れ」と脅迫した。それがただの僻みで済むことか。
抑えていた怒りがこみ上げてきて血管が切れそうだ。
握った拳が震えてきた。
しかし、早希の前で怒鳴り散らすわけにはいかない。早希の前ではゆとりのある大人の姿でいたい。
「リストラの八つ当たりを俺で晴らそうとした理由はなんだ」
「友人知人のつてを辿っていくと必ず幸せそうな先輩の結婚の話がでました。こっちは無職のシングルマザー、必死になって仕事を探しているのに、息子のリキの顔に似たひとは仕事も恋愛も成功をしていて幸せそうでーーー私は先輩の幸せを妬んだんです。私が知っているあの頃の先輩の生活は華やかで・・・常に女性に囲まれてて。先輩の噂を聞く度にやるせない気持ちになって・・・だから昔の女のひとりくらい先輩の子どもを妊娠したって言っても一瞬はああそうかもって思うかなって」
「昔の女?」
「昔の女だと?!」
驚いた俺と早希の声がかぶる。
「大丈夫です。先輩が私のことを覚えていないだろう事は織り込み済みでした。大学時代、先輩の周りには常にひとで溢れていましたし、私はただの3つ下のゼミの後輩ですし。あの子を妊娠した頃にはもう芸能界との付き合いを絶っていたなんて知りませんでした。調査不足だったんですね」
女はそう言って背筋を伸ばしてソファーに浅く腰掛け直した。
口調と表情を変えすっかり態度を改めた女は俺と早希に深く頭を下げた。
「申し訳ありません。お騒がせいたしました。出来心だったといえば信じてもらえますか」
「出来心でこんな非常識なことをしたというのか」
「ーーー数ヶ月前、勤めていた会社の経営が怪しくなりすぐにシングルマザーの私はリストラ対象になりました。何とか粘ってみたものの結局先月退職。再就職先を探していたところで久保山先輩の、アクロスコーポレーションの副社長の結婚話を耳にして・・・ただの僻みだったんです」
ただの僻みだと。
顔に記憶すらない後輩がただの僻みでただの先輩の婚約者の元に子連れでやってきて「責任を取れ」と脅迫した。それがただの僻みで済むことか。
抑えていた怒りがこみ上げてきて血管が切れそうだ。
握った拳が震えてきた。
しかし、早希の前で怒鳴り散らすわけにはいかない。早希の前ではゆとりのある大人の姿でいたい。
「リストラの八つ当たりを俺で晴らそうとした理由はなんだ」
「友人知人のつてを辿っていくと必ず幸せそうな先輩の結婚の話がでました。こっちは無職のシングルマザー、必死になって仕事を探しているのに、息子のリキの顔に似たひとは仕事も恋愛も成功をしていて幸せそうでーーー私は先輩の幸せを妬んだんです。私が知っているあの頃の先輩の生活は華やかで・・・常に女性に囲まれてて。先輩の噂を聞く度にやるせない気持ちになって・・・だから昔の女のひとりくらい先輩の子どもを妊娠したって言っても一瞬はああそうかもって思うかなって」
「昔の女?」
「昔の女だと?!」
驚いた俺と早希の声がかぶる。