彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
「シングルマザーと言ったが、本当の父親は何をしているんだ」

本当の父親と言うと途端に女は黙り込んだ。

「金に困っているなら頼るべきは君の息子の本当の父親じゃないのか」

息子の顔が俺に似ているからといって俺に嫌がらせをするのはお門違いもいいところだ。
仮にそれが俺の遠縁でも俺には何の関係もない。

「さっきも言いましたけど、あなたの息子さんの父親はレイフさんですよね」

早希が問いかけても女は視線をそらしこちらを見ようとしない。
俺は遠縁とはいえレイフという男を直接知らないが似ているのだろうか。早希は断定しているようだが。


「早希、常務はそのレイフ・カーヴィンという男がが今どこで何をしているのかも掴んでいるのか?」

口を開かない女は放っておくに限る。

「ええ。レイフさんは2年ほど前からミラノで輸入品関連の小さな会社を個人経営していると聞いています」

えっと、女は息を呑んだ。
「嘘よ。彼は大きなぶどう園のオーナーでワインの酒造メーカーだって持っていたし、他にも幾つかの会社を持っていたわ」

「私が知っているのはこの1~2年の話です。それ以前の、あなたがレイフさんとお付き合いをしていた当時のことは存じ上げません」

「嘘よ、信じられないわ。だって彼の葡萄園のワインは今年も優秀な賞を獲っていたしーー倒産するわけがないもの」

顔色を変えそんなはずはないと女は大きく首を横に振った。

「でしたら調べましょうか。・・・イタリア国内の有名企業のことなら大抵のことは由衣子に聞けばわかります。聞いてみましょう」
と早希は席を立ち寝室に向かうとすぐに高橋さんを連れて戻ってきた。

子どもはお昼寝中らしい。
おやつを食べさせ子ども向けのビデオを見せるとうとうとし始めたためベッドに寝かせたらすぐに寝付いたのだという。
知らない環境で疲れていたのかもしれない。

「で、オトナの話し合いは済んだわけ?」

高橋さんが俺たち三人の顔を順番に見てまだ終わっていないと判断したらしく不機嫌そうに口を曲げた。

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