政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「今の、モデルハウスの受付という仕事も好きですし続けられたら嬉しいですけど、いずれ、インテリアデザイナーとか設計、建築とか、直接顧客の家づくりに関われる資格もとれたらとも思ってます。夢というか。だから、毎日仕事は学校に学びに行っているみたいで楽しいんです」
四半期に一度、モデルハウスのカーテンやクロス、家具の配置を変えるのだけれど、そのときはインテリアデザイナーの隣に張り付いているし、設計部が間取り図を新しく作ったときにはよく一緒になって覗き込んでいる。
好きなことを仕事にしている人は、近くで見ていてとても憧れる。
そう話すと、蓮見さんは「そうか」と言い一度うなずいた。
「案外しっかりしているんだな」
「いえ。父の会社に入社している時点で甘えてますから。だから……本当は社長令嬢とかそういう目で見られたくないなんて、偉そうに言えた立場ではないんです。変な意地ばかり張ってるって自分でもわかってるんですけど」
ポロッと無意識にこぼれた弱音に自分自身でも驚いたし、どうしてこんな話を蓮見さんにしているのだろうと不思議に思う。
同居を始めた当初は、私のことを話す必要もないと考えて誤魔化していたのに、あの頃から心の変化があったということだろうか。
昨日、看病してもらったから? 泣いたところを慰めてもらったから?
心に変化があったとしたら……それはどんな?
心の中で自問自答している私をじっと見ていた蓮見さんはひとつ息をついてから席を立つ。
そして、ソファの背もたれに置いてあったネクタイをとり、首に回しながら私に視線だけ向けた。