政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


『あの、この部屋って今回の同居にあたって契約したんですか? その、ひとりで住むにはずいぶん広いなって思って』

いつか聞いたとき、蓮見さんは否定した。

『いや。もとからひとりで住んでいた。散らかる以外で部屋が広くて困ることはない。今回の同居にあたって変えたのはベッドくらいだ』

そう言っていたはずだ。

『ここには寝るために帰ってきていたようなものだったからな』

生活感がないことについて、そうも話していたのに……どういうこと?

蓮見さんも柳原さんも、嘘をついているようには思えない。
そんな私の心境に気付いたように、柳原さんが続けた。

「今のマンション、空気清浄や湿度を一定レベルで保つために空調設備にかなり気を遣っているらしいの。前の部屋から引っ越すって話をされたときに、蓮見さんに理由を聞いたらそう教えてくれた。〝少し気を遣う必要ができたから〟って」
「空調……?」
「私は、彼自身にアレルギーが出たとか、たとえばペットを飼いたいだとかそういう話だと思っていたけど……きっと宮澤さんのためでしょう? 宮澤さんと一緒に住んでるって知ったとき、すぐに気付いた。思い返してみれば、引っ越す理由を話していた蓮見さんはいつもより柔らかい表情と声だったから」



< 175 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop