政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


お金さえあればいいなんて、そんなひどい嘘のせいで、結局自分の首を絞めている。

蓮見さんの向こうに、ソファが見える。

毎日お風呂を済ませたあと、ふたりで並んで話すソファ。その前にある、最近ではコーヒーをよく置くローテーブルも、私が必死に作った手料理を並べるダイニングテーブルも……この部屋には、蓮見さんの想いが溢れている。

ここにある空気でさえ、私のためを想って選ばれたものだった。
どうして気付かなかったんだろう。

蓮見さんが見てくれていたのは、〝妻〟じゃない。
ちゃんと〝私〟だ。

こみ上げてくるたくさんの感情をぐっと堪え、蓮見さんを見る。

「ごめんなさい。私、嘘をつきました。政略結婚なんて、したくありません。蓮見さんが好きだから、ちゃんと恋愛をして結婚がしたいです。蓮見さんが嫌がっていた、あたたかい家庭を築いて、ベタベタして過ごしたいです」

じっと見つめて告げた私に、蓮見さんが驚きから目を見開き……そして、困ったように笑った。






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