政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
蓮見さんは「柳原?」と、柳原さんの名前に反応を示しながらも、私の様子からとくに揉めたわけではないと悟ったのか、それ以上は追及しなかった。
「あの、仕事はどうしたんですか?」
スリッパに履き替えながら聞く。
なかなか答えが聞こえないので不思議に思いながら顔を上げ、まだ怒っているように見える顔に気付いた。
「こい」
短く言った蓮見さんが背中を向けて歩き出すので、不思議に思いながらも後ろに続く。
蓮見さんはリビングの中央で足を止め、私と向き合った。
「俺に対しての態度が変わったのは、盛岡さんに余計な話をされたからか? それとも、別に理由があるのか?」
「え……」
きっと、気持ちの変化が態度にも出ていたんだろう。
バレていたことに動揺する私に、蓮見さんが続ける。
「目が合ってもすぐに逸らすくせに、俺が他を見ているとずっとこちらに視線を向けているのを感じる。キスすると、戸惑ったように目を泳がせる。俺が触れようとしていることに気付くと、誤魔化すように笑い避ける。……これだけ態度に出しておいて、俺が気付かないとでも思ったか?」
並べられるとたしかに気付かない方が難しいと思った。
私は意地を張って強がることはあっても、昔から上手な嘘はつけない。隠し事も苦手だ。
そんななのだから、最初から嘘なんてつかなければよかったのだ。