政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「大丈夫です。問題なく過ごせました」

こうして目を合わせるのも久しぶりだな、と思いながら答えた。
感情の見えない瞳は変わらないのに、別に冷たいわけではないと思うのは半月という熟成期間のせいだろうか。

「そうか。荷物は届いたか?」

洗面所で出張用の鞄から洗濯物を取り出しながら聞かれる。
初日の様子からてっきり亭主関白タイプかと思っていたので、自分のことを自分でしているのには驚いた。

二週間分にしては洗濯物が極めて少ないのは、ホテルで都度クリーニングに出していたからだろう。意外と生活力がありしっかりしている。

「荷物というか、さっき大きなベッドが届きましたけど」

私はキッチンにいたし、業者の人も運び込む部屋や位置を全部蓮見さんから聞いているというので、とくに立ち会わなかった。

荷物が届くと蓮見さんからあらかじめメッセージは届いていたものの、まさかベッドだとは思わなかったので、サインのためのボールペンを持って出て行ってから驚いた。

荷物と言われれば、誰だってポンと手渡される物を想像する。

薄々感づいていたけれど、蓮見さんは言葉が足りない節があり、それはメッセージでも健在らしい。

「そうか」
「家事、するんですか?」

この部屋にはあまり生活感がないので、一応ひと通りある家電はもはやインテリア状態かと想像していた。
衣服はクリーニングに出して、掃除はハウスキーパーなりに依頼しているのだろうと。

でも、予想に反して蓮見さんは「する。嫌いじゃないからな」と答えた。

蓮見さんがリビングに向かうので、私もうしろに続く。
そんな私を顔半分振り返った蓮見さんがわずかに笑うので珍しく思っていると「寂しかったのか?」と聞かれた。

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