政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「まぁ、手料理の嫌がらせに夢中になって無理して倒れないようにな。宮澤、体あんまり強くないだろ。ああ、さっきの答え。俺が真っ先に浮かぶ手が込んでそうな手料理は、ロールキャベツかグラタンあたりかな」
白崎が今更すぎる回答を口にしたときインターホンが鳴った。
話すのをピタッとやめた白崎と一緒に玄関に向かう。
十三時予定のところ、今はまだ十二時四十分。ずいぶん早い到着だ。
「いらっしゃいませ。どうぞゆっくり御覧になっていってください」
てっきり約束していた顧客だと思ったけれど、違うらしい。白崎の対応からそれがわかった。
白崎の後ろから玄関を覗くと、そこに立っていたのはつばの広い白の帽子をかぶった、白いワンピースに黄色のカーディガンを羽織った女性。歳は二十代後半といったところだろうか。
長い黒髪は片方で結ばれている。
女性ひとりでの来客は珍しい……と思い見ていると、帽子をかぶったままの女性が口元に笑みを浮かべた。
「すみません。主人に言われて、色々なハウスメーカーを回って資料を頂いているんです。新居を考えているんですが、主人が仕事の都合でなかなか時間がとれないので……あの、パンフレットを頂くだけでも大丈夫でしょうか」
申し訳なさそうに言う女性に、白崎が笑顔を作る。
「そうなんですね。もちろん大歓迎ですよ。今ご用意いたしますので、ご主人様がお休みの際にはぜひご一緒に来店ください。今資料をお持ちしますね」
すれ違いざま、白崎に「アンケートお願いしておいて」とコソッと耳打ちされる。
アンケートは住所や名前以外にも希望や予算など、結構切り込んだ内容ではあるので私だったらためらうと思うけれど、こうしてモデルハウスまで足を運んでくれる方のマイホームへの本気度は高いため、半数ほどに書いてもらえる。
それでも強制ではないので、押し付けにならないよう気を付けて声をかけた。