愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
食べ物や匂いで気持ち悪いのは相変わらずだけれど、環境の変化に慣れてきたせいか、はたまたつわりとの付き合い方を覚えてきたからなのか。簡単な家事なら出来るし、自分が食べられるものも分かるようになった。

炊き立てのご飯がダメだけどコンビニのおにぎりは食べられるとか、揚げ物全般はダメなくせにフライドポテトは無性に食べたくなるとか。

何気なく祥さんの前でそれを口にしたその翌日、彼は『棚の端から端まで全種類を買ったのでは!?』と言いたくなるほどコンビニのおにぎりを山のように買ってきた。

思わず、『こんなに食べきれませんよ……』と言うと、祥さんは『寿々那は食べられそうなものだけ食べたらいい。残りは俺が食べるから』なんて言う。

最近の祥さんはわたしにちょっと甘すぎる。

歩きながらそのことを思い出し、一人「ふふっ」と笑ったわたしは、ついさっき産婦人科で貰ったばかりのエコー写真を取り出した。眺めているだけでふにゃふにゃと顔がゆるんでしまう。

(祥さんにも早く見せたいな……)

病院を出る前に、[妊婦健診無事に終わりました。順調です。]とメッセージを送っておいた。
祥さんからの返事はまだないけれど、今日は午後からずっと本社で会議が入っていると言っていたから、彼がわたしからのメッセージを見るのは夕方以降かもしれない。

(早く帰って来てくれたらいいなぁ……)

彼の嬉しそうな顔を想像するだけで、つわりの不快さが少しだけ軽くなるような気がする。

駅前にいるタクシーに乗ろうとロータリーに向かい歩きながら、手に持っているエコー写真をカバンの中に仕舞おうとしたその時―――。

「お嬢さん!」

突然大きな声で後ろから呼ばれた。

反射的に振り向くとそこには、いるはずのない人物が立っていた。


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