愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
***

さわさわと頭に触れる何かに、目を開けた。

薄暗い部屋の中、すぐ隣にある人影にわたしは慌てて飛び起きる。

「いっ……」

「大丈夫か、寿々那。そんなに急に起き上がったら体に良くない」

痛む頭を手で押さえていると、そんな言葉と共に大きな手がゆっくりと背中をさすった。

窓の外が茜色に染まっているのが見える。
ついさっきまで明るかったはずなのにどうして―――。

「い、いつ……」

「ん?今か?今は夕方六時を回ったところだな」

「えっ…!もうそんな時間っ…や、でもまだこんな時間なのに、」

祥さんの帰宅までには起きて夕飯の支度をするつもりだったのに、完全に寝坊だ。そんな時に限っていつもより彼の帰宅がかなり早い。

わたしは大いに焦った。
慌ててベッドから降りようとしたところを、大きな手にやんわりと制止され、まるでわたしの行く手を阻むように彼はベッドの端に腰を下ろした。

「落ち着け。そんなもこんなも、何も気にすることはない」

「でも、」

早く夕飯の支度をしなければ―――そう続けようとしたところ。

「具合が良くないんじゃないのか…?」

「え……」

「すごい汗だ。それに顔色もあまり良くない」

言いながら彼が手でわたしの額を拭う。そこで初めて、わたしは前髪が汗で額に張り付いていたことを知った。
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