愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「寿々那……?」

斜めにうつむいて彼から顔を逸らした。どんな顔をしているか自分でも分からなくて、それを彼に見られたくて。

何も言えず顔も上げられない。

つかの間の沈黙の後、背中の手がピタリと止まった。
さすがに呆れられたかも。そう思ったとき―――。

「珍しく早く帰って来られたが、かえってせっかく休んでいたところを起こすことになってしまったな……」

「そんなっ…!」

慌てて「そんなことはない」と言おうと顔を上げたると、頭をクシャリと撫でられた。

「病院に行って疲れたのだろう。もう少し休んでおいた方がいい」

疲れは妊婦健診のせいというよりも、そのあと荒尾に会ったせい。
だけどなんとなくそのことを口に出来なかったわたしは、黙って頷くしかない。

「それでどうだったんだ?健診は。順調だというメッセージは見たが」

「あっ…!」

「どうした」

「わたし、祥さんが帰って来られたら見せようと思っていたものがあって……」

病院で貰ったエコー写真のことを今になって思い出し、わたしは周りをキョロキョロと見渡した。寝室に持って入った記憶はない。

「きっとカバンの中だわ……」

玄関に置きっぱなしにしていたカバンの中にあるのだと思った。

「カバンだな、ちょっと待ってろ」

「あ……、自分で、」

慌てて引き留めようとしたけれど、素早く立ち上がった彼は「すぐに戻ってくる」と言って寝室から出て行ってしまった。
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