愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「やっ…!」

「今からでも遅くない、俺と来いっ…!俺と結婚して森乃やを継ぐって言うんだ…!」

「っ、」

「金は外国にいるおまえに貢いだことにして、結婚して一生懸命返すって言えば、社長も女将も娘可愛さに許すだろうよっ…!」

「なっ……そんな都合のいい話っ、誰も信じるわけな、」

「信じるさ。もともとあんたが外国に行く前から、俺たちは付き合っていることになってるんだ。どこもおかしいことはないだろう」

「…っ、そんな嘘を……」

「女将も社長もそれとなく匂わせただけで、あっという間に俺の話を信じた。森乃やの金もあんたのために使ったって言えば、二人とも裏切られた俺を憐れに思って許してくれるだろうよ」

「何をバカなことを……」

「どのみち俺にはもう後がない。このままじゃ森乃やは香月のもの。そうなれば俺はクビのうえにムショ行きだ」

罪を犯したのだから自業自得じゃないか―――。

怒りを込めて睨みつけようとするけれど、荒尾に掴まれた腕がぎちぎちと締め付けられて、痛みのあまり顔を歪ませてしまう。

「あんたさえ……あんたさえいれば……あとはどうにでも………」

再びブツブツと独り言を唱え始めた荒尾の目が、まるで暗い(うろ)のよう。濁りくすんだそこには、わたしのことなんて少しも映していない。
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