愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
荒尾はまるで独白のように喋りつづけた。
「あんな古臭い料亭のままじゃあ、遅かれ早かれ潰れていたんだ……俺が社長になったら、森乃やを今よりもっと大きく出来るんだったのに……なのにあんな直前で香月に横からかっさらわれるとは……」
最後の方はほとんど独り言のようにブツブツと唱えながら、荒尾が少しずつこちらににじり寄ってくる。
あと二メートル―――というところまで距離が縮まった時、雲が切れたのかガラスの向こう側が明るくなった。
温室が明るくなったことにホッとしたのも束の間。喉が「ひゅっ」と音を立てる。
今まで薄暗い温室の中ではぼんやりとしか見えなかった荒尾の顔がハッキリと見えたのだ。
もともと腫れぼったい一重まぶたは落ちくぼみ、頬はげっそりとこけていて、顔は土気色。
荒尾は、二週間前に会った時とは別人のようにやつれていた。
「あ……」
荒尾の異様な雰囲気に背中にぞくりと悪寒が走った。膝が抜けないように必死に足を踏ん張るけれど、小刻みに足が震えて地面がぐらぐらと揺れる。
「ぜんぶ……全部おまえのせいだっ…!おまえが大人しく俺と結婚していれば、すべてが上手くいったのに……なのに男と逃げるだと!?―――ふざけるなっ!」
大きな声で怒鳴られ、背中がビクリと跳ねる。逃げ出したいのに、恐怖のあまり足が竦んでその場から動けない。
あっという間に目の前に荒尾が立った。
背中を反らせながら後ずさった足に、鉢植えがぶつかる。もう後ろには下がれない。
伸びてきた手に身を竦ませると、二の腕を掴まれた。
「あんな古臭い料亭のままじゃあ、遅かれ早かれ潰れていたんだ……俺が社長になったら、森乃やを今よりもっと大きく出来るんだったのに……なのにあんな直前で香月に横からかっさらわれるとは……」
最後の方はほとんど独り言のようにブツブツと唱えながら、荒尾が少しずつこちらににじり寄ってくる。
あと二メートル―――というところまで距離が縮まった時、雲が切れたのかガラスの向こう側が明るくなった。
温室が明るくなったことにホッとしたのも束の間。喉が「ひゅっ」と音を立てる。
今まで薄暗い温室の中ではぼんやりとしか見えなかった荒尾の顔がハッキリと見えたのだ。
もともと腫れぼったい一重まぶたは落ちくぼみ、頬はげっそりとこけていて、顔は土気色。
荒尾は、二週間前に会った時とは別人のようにやつれていた。
「あ……」
荒尾の異様な雰囲気に背中にぞくりと悪寒が走った。膝が抜けないように必死に足を踏ん張るけれど、小刻みに足が震えて地面がぐらぐらと揺れる。
「ぜんぶ……全部おまえのせいだっ…!おまえが大人しく俺と結婚していれば、すべてが上手くいったのに……なのに男と逃げるだと!?―――ふざけるなっ!」
大きな声で怒鳴られ、背中がビクリと跳ねる。逃げ出したいのに、恐怖のあまり足が竦んでその場から動けない。
あっという間に目の前に荒尾が立った。
背中を反らせながら後ずさった足に、鉢植えがぶつかる。もう後ろには下がれない。
伸びてきた手に身を竦ませると、二の腕を掴まれた。