愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
お義父さまがおっしゃるには。

祥さんは自分たち夫婦にとって遅くに出来た待望の子どもで、その一人息子が三十を過ぎても中々結婚相手を連れて来ず、ヤキモキしていた。なので息子から『結婚したい相手がいる』と教えられた時は夫婦共々大喜び。けれど相手を紹介されるより早く『婚姻届』に署名をすることになるとは思わなかったそう。

永遠に独身のままよりは良いだろうと証人欄に署名をしたら、立て続けに『離婚届』も出してきて。さすがにそれはあまりに不誠実じゃないかと言うお父さまに、祥さんは『これはもし寿々那が無理やり婚姻届けを出させられていた時の保険だ』と言ったという。

それを聞いて驚いた。
書斎で見つけた離婚届は、彼がいずれわたしと離婚するためではなく、わたしと結婚するためのものだったのだ。
しかもその署名を自分の父親に頼むだなんて―――。

あの離婚届には、わたしを嫁に貰うという彼の強い覚悟がこもっていたのだ。
そのことが分かって、泣きそうになるくらい嬉しかった。

必死で涙をこらえていたけれど、さらにお義父さまが言った言葉に、落ちかけていた涙が一瞬でピタリと引っ込んだ。

『庭に温室を建てると言い出したことにも驚いたが』―――と。
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