愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
『業務上横領罪』『住居侵入罪』と『暴行罪』で起訴されることが決まった為、拘置所に拘留されている荒尾がここに現れるはずがない。

何度自分にそう言い聞かせても、温室の手前で足が動かなくなる。地面に足が貼り付いたみたいにそれ以上前に進めない。無理にでも進もうとすると、全身がブルブルと震え出してしまう。

ハーブの世話はしたいのに、怖くて中に入れない。
恐怖心に負けてしまう自分が悔しくて悲しくて。

せっかく家に帰って来られたのに気持ちが落ち込んで塞ぎがちになったわたしに、祥さんが言った。

『俺と一緒なら大丈夫か?』―――と。

そうして彼はそれから毎朝毎晩、一日二回の温室の世話に付き合ってくれるようになったのだ。

けれど、いつまでもこのままで良いわけない。多忙な彼をこれ以上わたしの都合に付き合わせるわけにはいかないと、二週間経った今日、わたしは意を決して、こっそりとベッドを抜け出してきたというわけだ。


「大丈夫になったのはよいことだが、だからと言って、置いて行くなんてひどいだろう」

「だ、だって……祥さん、よく寝てたんですもん……」

ぐっすり眠っている彼を朝早くから起こすのは忍びない。その気持ちはいつもあったのだ。
それでも平日は『どうせ出勤するために起きるのだから』と心を鬼に出来たけれど、今日のように休日はやっぱりゆっくり眠っていてほしい。

やっと一人で温室に入れるようになったわたしは、「これからはゆっくり休んでいてください」と言おうと口を開こうとしたら―――。

「そうだな。ゆうべはなかなか寿々那が寝かせてくれなかったからなぁ」

「っ…!だってそれはっ、」

「あんなに可愛くおねだりをされたら、寝ている場合じゃないな」

「誤解を招く発言はやめてくださいっ!」

「誤解を招いて困る相手はどこにもいないが?」

「~~~っ」
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