愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
よく分からない屁理屈をこねられて、地団駄を踏みかける。
だけどすぐ、「もうっ、わたしが変なことをお願いしたみたいじゃないですかっ!」と精いっぱい抗議した。

「『変なこと』とはひと言も言っていないぞ?『可愛いおねだり』と言っただけだ」

「もう……『母に何と言ったのか教えてください』ってお願いしただけなのに……」

わたしは頬を膨らませて後ろを振り返り、彼をじっとりと睨んだ。

母は病室で二人きりで過ごしてた時に、【KAGETSU博多】で婚姻届の証人欄に署名をした時のことをわたしに話してくれていた。

母は最初、署名をすることを断ったそう。

『婚礼直前に花嫁を強奪するような人に、娘を渡すことは出来ません』

そうキッパリと。

けれど祥さんは、引き下がるどころか思わぬことを口にしたと言う。

『突然すぎたことは申し訳ないと思っています。ですがもともと、先に結婚の約束をしていたのはわたしの方です』

『何をバカなことを。そんな話寿々那から一度も聞いたことがありません』

母のきつい物言いに祥さんは少しも怯むことはなく、母の言葉を借りて言うなら「しれっとした態度」でこう言ったそうだ。

『それはそうでしょうね、本人は覚えていないでしょうから』
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