愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
母からその話を聞いて以降、わたしと祥さんの結婚が『政略婚』ではなかったことにホッとしつつ、母が残した『本人から聞きなさい』という言葉がずっと気になっていた。

けれど、『ショックな内容だったらどうしよう』とか、『別に聞かなくても今までと何も変わらないよね?』とか、そんなことばかり考えしまい、このまま知らないままでもいいかと思い始めた頃だったのだ。お義父さまから温室や離婚届の真実を聞いたのは。

わたしはハッとした。
母とのことで「自分の気持ちや考えを伝える」ことの大切さを学んだのだった、と。
そのことを思い出したわたしは、その夜、寝室に入ってから祥さんに訊ねたのだ。

すると彼は―――。

『寿々那からキスしてくれたら、教えてやってもいいぞ』

口の端をくっと持ち上げて不敵に笑いながら、そんな交換条件を出した祥さん。

それを見た瞬間、腹の底がぐらっと沸いた。
どうせ出来ないと思っているんでしょう…!

わたしはキングベッドの隣に座る夫の唇めがけ、勢いよく身を乗り出した。半ばぶつける勢いで重ねると、彼がいつもそうするように唇の隙間から舌を差し入れる。

だけどそれも一瞬のこと。彼の反応なんて待たず、来た時よりもさらに素早く、飛び退かんばかりの勢いでサッとそこから退散した。
その勢いのまま、頭から湯気が出そうなくらい熱い顔のまま両目をギュッとつぶって、思い切り叫んだ。

『しましたよっ…!だからちゃんと教えてくださ――ぃんっ、』

最後のところで口を塞がれた。
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