愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
[2]


「ここって……」

突然現れた祥さんに森乃やから連れ出され、黒塗りのリムジンに乗せられて移動すること小一時間。車から降りてすぐ、目の前に立つ白亜の洋館を見上げながらそうつぶやいた。

車に乗せられた直後は、まるで五年前の再来のような出来事に呆然としたものの、すぐに我に返った。

『いったいどういうことですか⁉』

『心配するな。(さき)のことは森家に頼んである』

かみ合わない回答にむきになったところで、相手の方が一枚も二枚も上手。

『怒った顔もかわいいな』
『二週間ぶりの顔をよく見せて』
『おかえりのキスはしてくれないのか?』

運転手さんがいてもお構いなしにそんな甘い口撃をくり出してくるから、それをかわすのにとにかく必死なうちに目的地に到着した。――というわけだ。


「行くぞ、寿々那」

祥さんは呆然とするわたしに声をかけると、流れるような動作でわたしをエスコートしながら中へといざなう。

「わぁ、素敵!」

中に入った瞬間、感嘆の声が漏れた。
高い天井から下がるアンティークなシャンデリア、木製の大きな上げ下げ窓。暖炉やグランドピアノもある。

明治時代の迎賓館を思わせる華やかなホールに目を奪われているうちに、奥からスーツの男性がやってきた。ネームプレートには『支配人』と書かれてある。
祥さんはその男性にわたしを紹介すると、ここがどこなのかを説明してくれた。

< 206 / 225 >

この作品をシェア

pagetop