愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】

小一時間ほどで館内をひと通りで巡り終える。

月香館をもう少しゆっくりと味わいたいと気持ちはあるけれど、幸のこともある。
親から離れてもぐずることのないしっかりした子で助かってはいるけれど、夕方からは森乃やも忙しくなる。いつまでも両親や妹夫婦に甘えているわけにはいかないだろう。
そんなことを考えながら歩いていたら、なぜか祥さんはエレベーターに乗った。

なにか見そびれた所があるのかな……。

エレベーターは最上階の五階で止まり、客室と分かる部屋に通された。建物と庭園が一気に見下ろせる広々とした和洋室だ。

客室も見学させてくれるかな、なんて考えているうちに、彼はおもむろに着ているスーツの上着を脱ぎだした。反射的にそれを受け取り、目についたハンガーにかけて吊るそうとしたとき。

「少し休憩したら風呂に行こうか」

「え?」

ハンガーをクロゼットにかけようという体勢のまま振り返る。

「食事の時間まではまだかなりある。思う存分ゆっくりしてきたらいい。ここは温泉も自慢のひとつなんだ」

夕食だけでなくお風呂まで⁉ 
いくらオーナーとは言え、オープン前にそんな好き勝手にくつろいでいいものなのだろうか。

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