愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「紫と黄色はビオラ、ピンクはバーベナ、白は…ペンタスだわ」

「全部分かるのか?」

「え、あ、はい。これも一種のハーブですから」

「なるほど。エディブルフラワー、食用花か」

「はい、そうです。お花もですが、それ以外もミント、ルッコラ、バジル、パセリなんかがメジャーですよね」

「ルッコラやパセリもハーブなのか」

「そうなんです。香りや薬効があって人にとって有用な植物全般を、ざっくりとそう呼んでいるんです」

「なるほど。そのままで食べられるハーブというのは、結構あるものなんだな」

「そうですね。日本でメジャーな大葉もハーブの仲間なんですよ」

「大葉も……なるほど、そうか」

「はい」

わたしが頷くと、祥さんは器用にフォークの背にバーベナを乗せた。

まるでくちづけるかのようにピンク色の花びらに唇を寄せ、それからおもむろにそれを口の中に。

その仕草が妙に官能的に見えて、わたしは自分の頬がじわりと熱くなるのを感じ、慌ててそこから視線をはがした。


それ以降の料理にも、ディルやクレソンなどのハーブが使われていて、その度に祥さんはあれこれと質問してくるから、それに答えているうちにまたしても訊かれていること以上のことを説明したりして、食事が終盤になる頃にはお腹と一緒に気持ちも満たされていた。
< 39 / 225 >

この作品をシェア

pagetop