愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「で?どういうことなんだ」
「………」
「泣き止んだのだから、今度こそきちんと説明してもらおう」
落ち着いた低い声には、有無を言わさぬ響きがあった。
祥さんは、一人掛けのソファーに深く腰かけて、長い脚を組み、ひじ掛けについた腕に頬を乗せている。
その彼に向かいからじっと見つめられ、わたしは視線をさ迷わせた。
「あんなところで、きみみたいな子に突然泣き出された俺には、きちんと話を聞く権利くらいあるだろう」
エレベーターの前や通路には多くの人が居て、わたしが突然泣き出したせいで、きっと彼は白い目で見られたのかもしれない。
「この国は紳士の国だからな」と付け足され、(やっぱり……)と体が小さくなる。
「しかもその前のあのセリフ。あれは男に誤解されても、文句は言えないぞ」
「ごっ、」
「それに、自分の部屋に連れてきておいてこんなことを言うのもなんだが、男に気軽について行くもんじゃない。普通は襲われているぞ」
「っ……気軽なんかじゃ、」
「じゃあどういうことだ。気軽じゃないというなら、きちんと説明をしなさい」
ピシャリと叱りつけるように言われ、わたしはうつむいた。両手に持ったタオルを握りしめ、下唇をキュッと噛んでから、意を決して口を開く。
「結婚するんです、わたし」
「は?」