愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
ただでさえ、家の掃除や庭の手入れなど、手間がかかることはほとんどプロのスタッフがやってくれているのだ。わたしにやれることなんて数えるほどなのだから、料理くらいはちゃんとしたい。
彼の体のことを心配する気持ちも嘘ではないけれど、彼には返しきれないほどの恩を貰っているのだもの。

「今日もまた助けてもらっちゃった……」

貧血で倒れかけたせいで、彼にまた面倒をかけてしまったと反省。シュンと項垂れてすぐ、顔がカッと熱くなった。抱えられた時のことを思い出したのだ。

整った男らしい顔。
たくましい胸と長い腕。
洗練された都会的な香り。

初めて会った時から何も変わらないはずなのに、見るたび触れるたび、どんどん彼に惹き付けられていく。自分よりいくらか高い体温に触れられるたび、胸がドキドキとうるさく騒いで仕方ない。

ついさっきだって、帰ってきた彼の顔を見た時ほっとしたと同時に胸が甘く高鳴った。
この広い家の中で一人きりなのが寂しいのは、見知らぬ土地で他に家族や知り合いが誰も居ないせいだと思っていたのだけど。

「なんでだろう……刷り込み…?」

(かえ)った雛鳥のように、処女を貰ってくれた彼のことを自分の庇護者だと感じているのかも。

だとしても、わたしにとって彼は、まぎれもなく救世主(ヒーロー)だ。
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