編集後記
そこで、眼前の舞衣が呼んでいる事に気が付き、我に返った。
「何か、思い出したの?」
舞衣の問いに、現実との乖離にサッと血の気が引いて、思わず身震いした。
「ちょっと記憶を整理したいので、お時間いいですか?」舞衣は頷いた。
記憶にダイブする。
孔の顔が浮かぶ。掠れた声で呟く。
「俺は読んでしまった。本の内容なんかはどうでもよかった…。そんなに重要な事は書いてなかった…。そんな事より、あれは“罠”なんだよ!」
語気が荒くなる。
「覇王の書、なんて名前はそれに気を向かせる為の罠なんだ!それを開いたからと言って、何てことはない…。
読ませる気なんてそもそも無いんだ。ぺらぺらと内容がない本をめくっていくだろ、そうするとこの本は何が言いたかったのかって、他の人の意見が訊きたくなるだろ?そう!批評だよ!あとがきを読めば、その本を読んだ解説者が内容がどうだったか、書いてくれている。それを読もうとしたんだが、あとがきは付いてなかった。
その後に、編集後記が付いていた…。他人ではなく、書いた本人ならどう考えていたのだろう、と興味本位で見たのさ、編集後記を」
じっと、固唾を飲んで聞いていた。
次の言葉を待った。
「この本は、編集後記を読ませる為に書かれた本なんだよ…」
渓は意味がわからなかった。
著者が、作品を上梓した時、その背景や想いなどを書いたモノが編集後記である。その編集後記をメインに書かれた本など聞いた事が無い。しかも、それを読ませる為だけに本が存在している事になる。そんな事があるのか?理解しがたかった。
「それで先輩は」
みなまで言う前に、孔に食い気味に遮られてしまった。
先輩はどうしたいのですか?そう訊こうとしていた。その答えは他でもない、孔の口から告げられた。
「一緒に見てくれないか?渓」
「何か、思い出したの?」
舞衣の問いに、現実との乖離にサッと血の気が引いて、思わず身震いした。
「ちょっと記憶を整理したいので、お時間いいですか?」舞衣は頷いた。
記憶にダイブする。
孔の顔が浮かぶ。掠れた声で呟く。
「俺は読んでしまった。本の内容なんかはどうでもよかった…。そんなに重要な事は書いてなかった…。そんな事より、あれは“罠”なんだよ!」
語気が荒くなる。
「覇王の書、なんて名前はそれに気を向かせる為の罠なんだ!それを開いたからと言って、何てことはない…。
読ませる気なんてそもそも無いんだ。ぺらぺらと内容がない本をめくっていくだろ、そうするとこの本は何が言いたかったのかって、他の人の意見が訊きたくなるだろ?そう!批評だよ!あとがきを読めば、その本を読んだ解説者が内容がどうだったか、書いてくれている。それを読もうとしたんだが、あとがきは付いてなかった。
その後に、編集後記が付いていた…。他人ではなく、書いた本人ならどう考えていたのだろう、と興味本位で見たのさ、編集後記を」
じっと、固唾を飲んで聞いていた。
次の言葉を待った。
「この本は、編集後記を読ませる為に書かれた本なんだよ…」
渓は意味がわからなかった。
著者が、作品を上梓した時、その背景や想いなどを書いたモノが編集後記である。その編集後記をメインに書かれた本など聞いた事が無い。しかも、それを読ませる為だけに本が存在している事になる。そんな事があるのか?理解しがたかった。
「それで先輩は」
みなまで言う前に、孔に食い気味に遮られてしまった。
先輩はどうしたいのですか?そう訊こうとしていた。その答えは他でもない、孔の口から告げられた。
「一緒に見てくれないか?渓」