エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「私、もう普通の人と同じようにしていいんだよね」

 確認するように千春は言う。
 清司郎が頷いた。

「ああ、いいよ。無理をしなければな」

「なにをしてもいいの?」

「そうだな。激しいスポーツ以外はな」

「本当に?」

「ああ、本当だ。主治医の俺が保証する」

 千春はキュッと唇を噛んで、また口を開いた。

「そうなんだ。じゃあ例えば……夫婦の……そういうことももうできる?」

「…………え?」

 清司郎が掠れた声を漏らす。
 頬が燃えるように熱くなった。

「千春……?」

 でもここで引き返すわけにはいかない。千春は心の中で自分を励ました。

「私、元気になったんだよね。だったら……今ここで、清君の本当の奥さんにしてほしいの」

「……なにを言ってるんだ、千春」

 戸惑う清司郎の視線が胸に痛かった。
 今この瞬間に千春はふたりの間にある幼なじみとしての信頼関係を壊してしまったのかもしれない。
 でもそれでもどうしても千春は清司郎との思い出が欲しかった。

 好きでもない人と結婚する。

 それを平気で受け入れていた過去の自分は、なんて幼くて無知だったのだろう。
 本当に愛する人ができた今、それを千春は痛感した。
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