エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「も、もう寝ます。おやすみなさい」

 取り繕うようにそう言うと、彼は疑わしげに目を細める。そしていきなり千春の手の下の掛布団をガバッと開けた。

「きゃあ!」

 布団の下の千春が隠した物があらわになる。清司郎が呆れたような声を出した。

「やっぱり……。お前、本を読んでたな」

 その通りだった。
 入院ばかりだった千春の唯一の趣味は読書。
 ここ何年かは気分が沈みがちであまり読まなくなっていたが、この家に来て穏やかに過ごすうちにまた読みたいと思うようになったのだ。
 康二に書斎の本を好きに読んでいいと言われてから、千春はちょくちょく借りてきて暇を見つけて読んでいる。もちろんいつもは九時にはやめるようにしているのだが、今読んでいるのはラストまで展開が読めない推理小説。止まらなくなってしまったのだ。

「清君ってば、最低!」

 千春は真っ赤になって抗議するが、清司郎は肩をすくめただけだった。

「お前、バレバレなんだよ。眠れないなんて嘘ついて。主治医をなめるなよ」

「だだだだからって!」

 千春は負けじと言い返した。

「女性のお布団を勝手にめくるなんて、主治医のすることじゃないわ。デリカシーがなさすぎよ! だいたい、就寝九時っていうのが早過ぎると思う。たしかに病院はそうだったけど、小学生じゃなんだから……」

 千春は彼を睨み口を尖らせてぶつぶつ言う。すると彼は目を細めて嬉しそうに微笑んだ。

「? 清君?」

 少し意外なその反応に千春が首を傾げると、清司郎が微笑んだまま口を開いた。
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