エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「すっごく面白いのよ。でも、その巻で最後なの……」

 残念な事実を口にして、千春はうつむいた。

「最終巻なのか?」

「ううん。シリーズはまだ続くんだけど先生が持っているのがそこまでなのよ」

「だったら続きを買えばいいじゃないか。駅前に本屋がある」

 清司郎はこともなげに言う。
 千春は首を横に振った。

「古い本だからもう売ってないわ。先生はネットで探してあげるって言ってくださったけど。忙しいのに申し訳なくて……」

 現役の医院長である康二は清司郎に負けず劣らず忙しい。
 たかだか千春の本に時間を割いてくれとはいえなかった。

「小夜さんは、インターネットは苦手だって言うし、私は携帯を持っていないし」

 すると清司郎は「じゃあ俺がやってやるよ」と言って自分の携帯を取り出した。
 件の本はすぐにヒットしたようだ。

「あった、あった」

「え? 本当?」

 千春は身を乗り出して携帯の画面を覗き込む。

「十二巻からでいいのか?」

「あ、でも待って、十五巻だけは探せばあるはずって先生が言ってたから……あ、こっちはセットなのね。あ、このシリーズも知ってる! また読みたいなぁ」
< 56 / 193 >

この作品をシェア

pagetop