エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

二回目の…

 夜更けの清司郎の部屋の前を千春は行ったり来たりしている。一冊の本を胸に抱きしめて。
 今夜彼は久しぶりに早く帰宅した。
 そして夕食を康二と三人で囲んだ後、やることがあるからと部屋へ引き上げていった。
 あれから約一時間。
 やることはもう終わっただろうか。
 千春は耳を澄ませて、部屋の様子を伺ってみる。だが中からは物音ひとつ聞こえなかった。
 もしかしてもう寝てしまった?
 千春は手にしている絵本を見て眉尻を下げた。
 ここ最近の彼は特に忙しい。夜勤でなくても、たいていは帰りは日付が変わる頃だった。
 朝も早くに出て行くから千春と顔を合わせることはほとんどない。
 あのキス以来、彼の前で挙動不審になってしまってどうすればいいかわからなくなっていた千春は、そんな毎日をホッとしたような寂しいような、そんな思いで過ごしている。
 そして今夜。
 久しぶりに家にいる彼に、千春は頼みたいことがあった。
 彼にしか頼めないことだ。
 だからこうして部屋を訪れたのである。
 千春はドアの前に立ち止まり、ノックをしようとして、でもその手を止めて考える。
 もう何日も前から彼が早く帰る日があったらこうしようと心に決めていた。今日は絶好のチャンスだ。
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