再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「皆川先生」
私は立ち上がり、クルリと振り返ると精一杯平気な顔をして、にっこりと笑って見せた。

「久しぶりだね」

そこにいたのは三年ぶりに見る皆川先生。
33歳とは思えないほど若々しく、精悍な顔つきもあの頃と変わらない。
それに落ち着きというか、貫禄のようなものも出て副院長が言った「すごく男前だから、環ちゃんもびっくりするよ」って言葉も間違ってはいないと思える。

ただ、今の私は素直に再会を喜べるような状況ではなかった。
皆川先生は私にとっての大きな古傷。
思い出すだけで、心臓をつかまれるような感覚になるトラウマ。
できることなら、会いたくなかった。

「よろしく」
差し出された右手。

「よ、よろしくお願いします」
私も右手を差し出した。

ギュッ。

えっ。

握手にしては強く握られて、思わず先生を見る。

「ちゃんと相手を見なさい」
「・・・」

それって、研修医の頃ずっと言われてきた言葉。
患者さんの異変を見逃さないように、「ちゃんと見なさい」と何度も何度も言われていた。

「すみません」
私はいつも謝ってばかりだった。

ヤダ、泣きそう。
どうしよう。こんなところで泣いたら変だと思われる。

「外来があるのでお先に失礼します」

まだ少し残っていたランチをトレーに乗せ、私は逃げ出した。
< 28 / 200 >

この作品をシェア

pagetop