再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「今はまだICUにいるんだろ?今の状態で外科的治療を検討する段階ではないだろう」
部屋の一番奥の方から部長の声が聞こえた。

「それはそうですが・・・」

今すぐ手術なんてできないのはわかっている。
ただ、彼女自身が精神的に参っていて病気に立ち向かう気力が感じられない。
きっと長い闘病生活の疲れと先の見えない不安からなのだと思う。
私としては、彼女に病気を克服するビジョンを提示してあげたい。
大丈夫治るんだよって伝えたい。
その思いが、先生たちにはなかなか理解してもらえない。

「はぁい、次の患者」

そうこうしているうちに次の患者に話が移っていた。
週に一度の一時間。1人の患者に長い時間をさけるはずもなく、次々と進んでいく。わかってはいても若輩者の私にはどうすることもできなかった。

はあぁー。
聞こえないようにため息をついた。

この病院が悪いとも、上司が悪いとも思わない。
きっとこれが社会の現実。
上手くなじめない私が悪いんだ。
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