再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「すみません」
そう言って敬が駆け込んできたのは数分後。

その間に患者は内視鏡室の中にあるベットに移り点滴を開始している。

検査室奥の医師控室に入ってきた敬は、チラッと私を見た後皆川先生のもとに歩み寄った。

「先生、すみません」
頭を下げる敬。
「うん、もう少し慎重に対応するようにお願いします」
「はい」

実際、今回の患者に敬がかかわっていたのかはわからない。ただ私の電話を受けただけかも知れないけれど、きっとカルテを確認したんだろうから状況はわかっているはず。


「ねえあなた、ちゃんとカルテを確認したの?」

先生たちの会話から少し離れた位置で、怒りの気持ちを感じながらも自分が何かまずいことをしたんだと気が付いている研修医に、私はなるべく優しく話しかけた。

「しました。5年前循環器を受診したのが最後で、消化器科での受診歴はなし。処方歴はお薬手帳もなく確認できませんでしたが、本人からは『飲んでいる薬はない』と確認しました」
「ふーん、循環器はなんでかかっていたの?」
「それは・・・」

カチカチとマウスを動かしてカルテを確認する研修医。

「あっ」
小さなつぶやきとともに、唇が震え出した。

「わかった?」
「はい」

どうやらバカではないみたいね。よかった。
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