再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
その日の夕方。

はあー、疲れた。

最後の最後に手こずる患者にあたって、検査室を出たのは6時を回った。
それでも予定通り検査を終えられればよかったけれど、患者の状態が思いの外悪く途中断念することになって疲労感も倍増した。

「お疲れ様」
「お、疲れさまです」

突然声をかけてきたのは皆川先生。
上部の検査はとても順調で5時前にはすべて終わっていたから、まさか先生が残っているとは思わなった。

「大変そうだったね」
「ぇ、ええ」
何だ、見られていたのか。

最後に検査した患者は大腸の腫瘍が想像より大きくて、カメラを最後まで入れることができなかった。頑張っていけるところまで入ったけれど、全容を把握するまでには至っていない。
この後CTやMRIをして、近いうちに手術になるだろう。

「先生なら、最後まで入れられましたか?」
衝動的に聞いてしまった。

もしかしたら、皆川先生なら、最後までカメラを入れて検査をすることができたのかもしれない。
そんな気がした。

「イヤ、あそこまでが限界だったね」
「そうですか」

よかった。
少しホッとした。

「でも、後15分は早く終えられたと思うよ」

それは、患者の苦しむ時間を後15分は短くできたはずだってことで、私の腕はまだまだだと言われているってこと。

「すみません」
「いや、別に叱っているわけではなくて」

わかっています。
でも、私は久しぶりに叱られた気分なんです。
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