エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
 確かに澪が小さい頃から好かれている自負はあった。でもそれはあくまで近所の兄として。
 幼なじみ以上の家族的な感情で思ってくれているんだとばかり……。

 昔は子どもだった澪が、大人になってリアルな恋愛感情として俺へ向けられるように変化したってことか。
 いや……だとしたら相当マズイ。

 俺が彼女をひとりの女性として意識している今、そんな深い愛情を見せられたら――。

 自分がこんなに恋に、誰かにときめくとは思ったこともなかった。
 溢れる想いに押され、俺は澪の顔を覗き込む。

「していい? キス。今度は俺から」

 澪は肩をビクッと揺らす。それから涙目を隠すように長い睫毛を伏せ、コクッと首を縦に振った。
 その合図を受け、俺は小さな顎を掬い上げ、血色のいい艶やかな唇を塞ぐ。

 想像以上に柔く甘い。
 一瞬重ねるくらいじゃ全然足りなくて、背中を抱き寄せ、角度を変えてもうひとたび口づけた。

「……ん、ふぅ」

 澪の鼻から抜ける可愛い声を聞き、当初考えていたよりも長めのキスになる。しかし、澪の息遣いが苦しげに変わったのを感じ、口を離した。

「澪。大丈夫? ちゃんと息して」

 酸欠のせいか緊張のせいか、耳まで真っ赤なミイを見て、自然と頬が緩む。

 自分のために一生懸命応えようとしてくれてる姿と、初めて見る彼女の蕩けた表情に、俺だけが知ってる彼女だと思うとなんだか優越感にも似た感情が芽生えた。

「ん……うん」
「倒れられたら困る。まだ足りないんだ」

 澪の返事を聞くや否や、再び口づける。唇を重ねた瞬間の吐息交じりの澪の声が火をつける。

 こちらが少し強引になると、澪はたとたどしく口を開いた。そして、俺の動きに合わせるべく、窺うように舌を重ねてくる。
 そんな澪が可愛くて、俺は澪の呼吸に合わせながら何度も繰り返した。

 これ以上は本当にマズイ。止められなくなりそうだ。

 辛うじてギリギリの理性を繋ぎ止め、距離を取った。
 澪はもう自分の身体を支えるのがやっとのようで、俺は彼女の肩を支えながら反省する。
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