外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 海外に仕事に出る際、貴重品の管理は徹底してきている。だからこれまで、盗難にあって困る事態になったことは一度もない。

 ベッドのそばに設置してあるセーフティボックスは出がけと変化はなく、開くと中身も変わらず被害に遭っていなかった。

 ホッとしたのもつかの間、すぐに部屋の中で大きく変わっていることにハッとする。


「え……ちょっと待って……?」


 部屋の端にまとめて置いている、仕事用の機材。そのバッグのひとつが無いことにすぐに気がつく。


「え、嘘でしょ? 盗まれたの……!?」


 水中撮影用の機材が入る大きなカメラバッグは残されているものの、無くなっているのは私が仕事でもプライベートでも長年使ってきた思い入れのある一眼レフカメラを入れたバッグ。

 自分史上一番高価なものでもあり、それに、無くなっては困る理由もあるカメラだ。

 勘違いや早とちりで済んでと願いながら、部屋を隅々チェックする。

 しかし、どこにも見当たらない。

 ショックのあまり気が遠くなりかけたとき、客室入り口のドアがノックされてハッと我に返る。

 ホテルスタッフと警察官が待っていることを思い出し、すぐに入り口に向かった。

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