過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「美香には、ここで結婚式を挙げたいと希望する人のドレスを作って欲しいんだ」
「え?」

どういうことなのだろう? 確かに雰囲気も良くて人気の出そうな教会だけど、アローズの扱う規模だとは到底思えない。そもそも、アローズが個人的な小規模のウエディングを扱うのだろうか。
首を傾げる私に、拓斗は説明を始めた。

「これは、アローズとは無関係なものだ。俺が個人的に立ち上げた事業になる」
「拓斗が、個人的に?」

初めて聞く話に、戸惑いを隠せなかった。

「そう。アローズで扱うウエディングは、大規模のものがほとんどだ。ちょうど俺たちの式みたいな」

そう言った拓斗は、わずかに申し訳なさそうな顔をした。彼は私が大規模な式に尻込みしていると知っているからだろう。
でも、それは私も了承しているから気に病む必要はないと、その都度伝えている。

「前に、知人の結婚式に招待されてね。古民家を貸し切った個性的なもので、すごく温かな式だった。アローズでは絶対に作れないものだ。できないと思うとどうしてもやってみたくなってしまうのが俺の性分で、あのとき経験したようなプライベートな式を作りたいという思いがどうしても消えなくて。それなら納得いくまで追求してみようと動き出したんだ。数年前にこの教会を見つけたのは、偶然だった。写真を趣味にしている友人にたまたま見せられてね」

そう話す拓斗の視線につられて、再び写真に視線を落とした。

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