過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「でも、拓斗には久々莉さんが……」

思い切って口にした久々莉の名前に、彼がどんな反応をするのか。怖くなってぎゅっと目を閉じた。

「久々莉さん?」

拓斗が何のためらいもなくその名を口にしたことに、胸がズキリと痛んだ。でも、自分から話し出しのだからと覚悟を決めると、閉じていた目を再び開いた。

「拓斗は、久々莉さんと一緒になりたかったんじゃないんですか?」
「何のことだ?」

困惑する彼の顔を見つめながら、勢いを失わないうちにさらに続ける。

「わ、私、ふたりが喫茶店で会っているのを見て……そ、それに、電話で話しているのも聞いてしまって……ご、ごめんなさい」

立ち聞きしてしまったのはどうしたって私が悪い。罪悪感から俯きたくなるも、なんとかそのままの姿勢を保って困惑する拓斗にさらに言葉を重ねた。

「い、以前、会社で電話している拓斗を見つけて……約束通り私を迎え入れたから、久々莉さんに戻ってきて欲しいようなふうに話しているのを聞きました」

ハッとした拓斗が決定的な何かを言う前に、遮るようにさらに畳みかける。

「た、拓斗は、久々莉さんに戻ってきてもらうために、私を守ってくれたのかと思って」
「それは違う」

私の話をすぐさま否定した拓斗に驚いて思わず顔を上げれば、真剣な表情の拓斗がいた。

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