過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「で、でも、桐嶋さんが……」
「あの男に、会ったのか?」

若干怒りの滲んだ声音に、ビクッと肩が揺れた。

「いや、すまない」

高ぶりを鎮めるように大きく息を吐き出した拓斗だったが、怒っているのかそれとも焦っているのか、ずっと複雑な表情をしている。

「いつ、会ったんだ?」

さっきとは違うどこか不安げな口調を疑問に感じつつ、帰り際に朔也に待ち伏せされて話をしたと打ち明けた。

「拓斗は久々莉さんに頼まれて私を助けたの? それを引き換えに、久々莉さんにアローズに戻ってもらうんじゃないかって。本当は、久々莉さんと一緒になりたかったんじゃないんですか?」

思わず感情が高ぶってしまう。
勢いに任せて、全て話してしまった。もう聞かなかったふりをしていた頃には戻れない。

私はこのまま、別れを告げられてしまうのだろうか。

「まさか、桐嶋が接触してくるとは思わなかった。もっと手を打っておくべきだった。嫌な思いをさせてしまってすまなかった」

朔也が会いに来てしまったのは決して拓斗のせいではないから、謝ってもらう必要などない。彼の謝罪を否定するように首を横に振った。

「それから、俺がいろいろと隠していたせいで美香を不安にさせたのは申し訳なかった」

ここで謝罪するのは、朔也の話が真実だからだろうか。
そうなら私はもう拓斗とはいられないと、苦しさに思わず顔を歪めた。

「違うんだ美香。俺の話を聞いて欲しい」

真剣な顔の拓斗に、これが彼と過ごす最後の時間になるかもしれないと覚悟をしながら、ゆっくりと頷いた。

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