過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
時間になってオフィスへ行くと、どこか緊張感が漂っていた。
聞けばどうやら今日はこの後、どこかの企業の人が見学に来るのだという。とくに珍しくはない。私がここへ来てからも、数回あったことだ。
ただ、そのどのときとも雰囲気が違うのは、何か理由があるのだろうか。

「アローズ、グループ……」

来客の情報を聞いて、固まってしまった。
〝アローズグループ〟といえば、つい先日泊ってしまったホテル・アローズを経営している日本の大企業だ。海外の主要都市には必ずと言っていいほど進出しており、観光、不動産、ブライダルなど、その経営内容は多岐にわたる。
アローズの名前に思わずあの夜を思い出しそうになって、慌てて首を振った。

聞けば、日本の本社からフランスへ視察に来ていた副社長が、どこかでこのオフィスの評判を聞きつけて訪問を打診してきたらしい。

社員たちが受け入れる準備を進めているが、研修で来ているにすぎない私には関係ないだろうと、早々に個室にこもった。
ここのところ早く帰らせてもらってばかりで、仕事はそれなりに溜まっている。残業は良しとしないお国柄とはいえ、締め切りがあるものは多くて残らざるを得ない日もある。
早速、頼まれていたパターンの作成に取り掛かった。今は忙しくしていられることがありがたい。

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