過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「でも、こうして美香とのつながりができた」

頬杖をついてこちらに向けてくる流し目は、たしかにあの夜バーで隣に座った男のものと同じだ。どこか色気を纏ったその視線に、不覚にもドキリとしてしまう。

「あっ、あの、あなたはどうして……」
「再び美香の前に現れたかって?」
「え、ええ」

オフィスにいたのは単なる偶然なのだろうか。
たまたまあの場で、私を見かけたのに過ぎないのか。
あの夜、私が彼に明かしたのは〝美香〟という名前と、彼氏に振られた話。そこまで真相に迫れるような情報は出しておらず、勤め先を特定されるとは考えにくい。

でも、ちょっと待って。今朝、ジゼルたちが何か言ってなかったか。たしか、アローズグループの本社から副社長が来るって。
ま、まさか、ねえ……。

運ばれてきた料理の説明に耳を傾ける余裕なんてなかった。ちらちらと伺うように目の前に座る男を見てしまう。
たぶん、三十歳前後だろう。彼がアローズの関係者だとしたら、もしかして副社長の秘書とかで同行してきたとか?
それなら身に着けているものの良さも納得だ。副社長付きともなれば下手な格好はできない。

店員が下がって再びふたりだけになると、拓斗はまっすぐにこちらを見つめてきた。その表情から本心は読み取れなさそうだ。

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